股関節鏡視下手術
私たちは患者さんに早期に復帰していただけるよう、できるだけ侵襲の少ない手術治療に取り組んでいます。
その一つは高度な技術を要する股関節鏡視下手術です。当科では、全国でも股関節鏡視下手術に積極的に取り組んでいる施設の一つで、股関節の周囲に3か所の穴をあけ、そこからカメラと処置器具を入れて股関節疾患の治療を行います(図1~図8)。
主な適応疾患は股関節唇損傷、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)、化膿性股関節炎、滑膜骨軟骨腫症などです。特に近年では大腿骨寛骨臼インピンジメントが股関節痛の病態として注目されており、寛骨臼側、大腿骨側における特異的な骨形態によって、股関節運動時に繰り返しインピンジメントが生じることにより、寛骨臼縁の関節唇および軟骨に損傷が生じる病態です。
骨盤側の寛骨臼縁(pincer病変)あるいは大腿骨頭頚部移行部の特徴的な画像所見(cam病変)のみならず、臨床所見を含めて総合的に手術適応を決定しています。また手術に際してはあらかじめコンピューターによるシミュレーションを行って、インピンジメントの場所、骨切除範囲を決定しています(図9)。
図1 手術体位 仰臥位で牽引手術台を使用します
図2 関節鏡や器具の挿入に使用するポータルです
図3 関節包切開。関節唇より数ミリ離して切開しています
図4 股関節鏡による股関節唇損傷部位の確認をしています
図5 術前に確認したpincer病変部を器具を使用して削っていきます。
図6 関節唇縫合の際にarthro-pierceという器具を用いて関節内に糸を引き出し、股関節鏡視下に断裂した股関節唇を縫合しています。
図7 大腿骨側頚部の関節軟骨移行部でCam病変を削り、関節包の縫合をしています。
図8 術前後のCam病変です。 左:術前 Cam切除前 右:術後 Cam切除後
図9 コンピューターシミュレーションによる骨切除範囲の評価