教授からのご挨拶

沿革

当講座は昭和51年に初代教授である井上哲郎教授により開講され、2代目長野昭教授、そして3代目現教授である私、松山幸弘に受け継がれてきました。 静岡県内のみならず、愛知県東部に関連病院をもち、これまで多くの整形外科医を育成してきました。

卒後教育について

現在初期臨床研修が盛んに議論されていますが、医師は一生涯教育を受け、自己研修に励むべきだと思います。まず浜松医科大学整形外科の魅力を増し、若手医師がここで学びたいと思えるような環境を作る必要があります。私は脊椎脊髄外科医でありますが、脊椎脊髄外科をここで学べばどこに出ても誇れる知識と技術を身につけられるようにしたいと考えています。
臨床で誇れるには、土台のしっかりした基礎研究の上になりたった臨床研究が必要で、研究発表、論文を作成することによって知識の整理と向上をはかり、その結果、患者さんによりよい医療を提供できるようになると考えています。また運動器として重要な関節外科にも力を入れ、地域病院と連携し最先端医療を、そして若手関節外科医を育成したいと考えています。

臨床と研究

整形外科全般を十分に研修できるよう9つの専門診療班に分け、それぞれの診療班が臨床技術を磨き、学会活動を通して全国に発信できるよう日々努力をしています。私は専門である脊椎脊髄外科の中でも、特に難治性である脊髄髄内腫瘍と麻痺率の高い胸椎後縦靭帯骨化症そして最近急増している成人の脊柱変形の治療を中心に行ってきました。どの疾患も手術的加療に難渋し、術後神経症状が悪化する可能性が高いため多くの脊椎脊髄外科医も敬遠する疾患です。
髄内腫瘍の手術的加療を行う上で、最大限に注意を払わなければならないのは術後の麻痺をできる限り少なく、そして可能な限り全摘出をめざさねばならないことです。この目的を達成するため、手術手技の向上と術中脊髄モニタリングの確立につとめ、その結果として術後麻痺の悪化率は20%へ軽減し、全摘出率は80%を超える成績まで得ることが可能となりました。

また私は基礎医学として脊髄損傷後の脊髄再生をテーマとして研究してきました。
現在は3人の大学院生が脊髄再生の研究に取り組んでいます。運動器領域の疾患を対象とする整形外科医が、臨床医でありながら先進の臨床研究を行うためには、助言者として他領域の共同研究者を持つ必要があると考え、学内外の基礎系、臨床系研究者との臨床・研究面で協力体制の構築に努めてまいりました。臨床上の問題点を基礎医学研究者との連携で解決することが、新たな診断法・治療法開発に繋がります。
同一施設内に基礎医学教室を持つという大学の利点を生かして、他領域研究室との共同研究による整形外科疾患の治療法開発を今後も活発に進めたいと考えています。

これからの抱負

私のモットーは安全安心の医療と若手教育の充実、そして常に笑顔で明るく楽しい医局を作っていくことです。
私は浜松医科大学医学部附属病院整形外科が最も安全で先進的な整形外科治療が受けられる医療機関であると広く認知され、患者さんにとって安心で、また医師にとっては魅力的な存在にしたいと考えています。

文の頭文字をアルファベトにしてKKSKI

以上KKSKIの5つは常に自分にも自問自答しながら生きてきているつもりです。

1の困難な症例ほど進んで治療に取り組むには、十分な知識と技術、チャレンジ精神、そしていたわる優しさが必要。
2のことわるべからず、は何事も依頼された仕事はまず引き受けることです。依頼者(目上の人、あるいは友人、後輩)はあなたの能力を信じて頼んできています。自分の持つ能力に限界をつけるべきではありません。依頼を断ることは自分に限界をつけることで、また一度ことわると依頼は減ってきます。 わざわざ自分で、自分を小さくする必要はありません。まず引き受けて努力すべし。断るときは倒れる時です。
3の最後まで最善を尽くせ、は途中であきらめることなく一つ一つを貫徹することが大切。いい加減に物事をすませるのではなく、「自分がしてもらうならこのようにしてもらいたい」と思うよう な最高の出来上がりを目指して努力を惜しまないことです。
4の感謝の気持ちを忘れるな、は人生すべてに通じています。人は誰しも一人だけの力では生きてゆけない。すべて周りの人の助けがあってこそ生きてゆけることを忘れてはいけません。どんな結果が起ころうとも、すべてを感謝の気持ちで受け入れるべきです。憎む気持ちはあってはなりません。「ありがとう」の一言で人はお互いに明るくなります。
5のいつも笑顔と笑いを大切に、は笑顔と笑いはすべてを幸せな気持ちで満たしてくれます。患者さんは常に痛みや悩みを持って来院する。診療する私たちが決してしかめっ面をして診療してはいけません。患者さんの顔をみず、パソコンばかり操作することは言語道断。パソコン内容は二の次三の次。まず患者さんの悩み痛みに共感し、そして暖かい笑顔と笑いで時間を共有すべきと思いま す。
きっと診療する私たちも、それを受ける患者さんも幸せになれます。

このKKSKIの5つが私の生き方であって、若い先生に感じ取ってもらいたい教育方針です。

あと一つ大切なことを忘れていた。
物事を行う上で、決して損得を考えて行うべきではないことです。損得を考えての行動から生まれた結果は長続きはしません。また人が嫌がることを率先して行おう。きっとみんなが幸せな気分になれます。

私は常々、「人は、様々な困難に出遭った時にどう考え、どう対応するかで評価される」と考えています。「どうしようもない」、「困ったことだ」と思ってばかりいると、心が狭くなり、出てく るべき知恵も出なくなります。その結果、原因や責任を他へ転嫁し、不満で心は暗くなり、不平で我が身を傷つけていきます。その一方で、困難を困難とせず、思いを新たに、決意を固く歩んでい けば、困難がかえって飛躍の土台石になることも少なくありません。要は考え方ひとつであり、「困っても『困らない』」ことに人生の妙があるように思います。
人間の心は孫悟空の「如意棒」のように伸縮自在であり、困難な時にこそ、かえって自らの夢を開拓する力を発揮しがちです。
困難に遭遇した時こそ著名な先人がどのような考えで人生を歩んできたか知りたくなり、松下幸之助の「道をひらく」、タル・ベン・シャーハーの「ハーバードの人生を変える授業」、ジム・ドノバンの「誰でもできるけれど、ごくわずかな人しか実行していない成功の法則」を読んでみました。

全てに通ずるのは

  • 1:感謝の気持ちを大切に、
  • 2:素直に、謙虚に、
  • 3:いつも明るく、ポジティブ思考、
  • 4:自分を信じて、
  • 5:思ったらすぐ実行、
  • 6:熱意を持って精一杯、
  • 7:損得で動かない、
  • 8:夢を持って、
  • 9:困難を困難と思うな、
  • 10:一陽来復

特にこの「一陽来復」は松下幸之助の大切にした言葉。窮地に立つということは、身をもって知る尊いチャンスではあるまいか。得難い体得の機会ではあるまいか。そう考えれば、苦しい中にも勇気が出る。元気が出る。思い直した心の中に新しい知恵が湧いて出る。そして、禍を転じて福となす、つまり一陽来復。暗雲に一筋の日が差し込んで、再び春を迎える力強い再出発への道が開け てくる。
今も今与えられた環境で、このような力強い想いと「困っても『困らない』」心意気で今後も躍進しましょう。

座右の銘
「鬼手仏心」

私たちのメスの動きは絶対に躊躇してはならず、一気呵成に切っていく。その時外科医の手はまさに鬼であります。
しかし心まで鬼になったらもうメスは凶器と一緒であり、冷静なる心の中の仏が手に取り付いた鬼をコントロールしなければならなりません。不必要な手術を避けるのは心の中の仏であると考えます。
まさに難治性脊椎脊髄疾患に立ち向かう心構えといえましょう。