小児整形外科の領域│浜松医科大学 整形外科学講座(医師・医学生向け)

小児整形外科の領域

 小児整形外科では、こどもの運動器に関係する先天性疾患や外傷について専門的に治療しています。各年齢に特有の疾患があり、治療は適切な時期を逃すと、完全に治すことが難しくなるため、適切なタイミングで診断・治療を行い日々成長する子供の骨格を正しい方向に導くことが基本です。当科では適切な時期に治療を行うため健診体制の再構築に取り組んでおり、小児科医、産婦人科医、保健師、助産師と連携した体制作りに取り組んでいます。
 小児では自身で症状などを訴えられないことや診察に協力が得られないことも多く、保護者からの情報を参考にし、患児を怖がらせないように玩具など使用しながら、時間をかけて診察します。成人と比較して、装具やギプスによる矯正など保存的治療が重要な役割を占めます。保存的治療できる例もあれば、適正な時期の手術のため悪化予防し、手術侵襲を最小限にするために行う例もあります。運動発達が遅延している例では発育を促すためや障害を有する例では療育のための装具の作成も行なっています。手術は、症状がある例だけでなく、将来のために予防的に手術を行うことがあります。手術の可能な時期が限られている場合もあり、各手術法の利点・欠点など十分に説明した上で、患児とその家族の希望に合わせて、話し合いの上で治療法を選択していきます。

古橋 弘基

対象疾患

1.股関節疾患:発育性股関節形成不全(DDH)、ペルテス病、大腿骨頭すべり症など

 DDH: 難治例や診断遅延例ではoverhead traction法による整復を行います。それでも整復が得られない場合は観血的治療を行います。

生後3〜7ヶ月
装具療法 リーメンビューゲル
生後7ヶ月〜3歳
牽引治療 overhead traction法
 
3歳以上観血的整復
5歳 術前
5歳 Salter骨盤骨切り術後
成長終了後

2.足の外科:先天性内反足、垂直距骨、麻痺性足部変形(脳性麻痺、二分脊椎など)、多合趾症など

 先天性内反足: Ponseti法による矯正を行います。難治例や再発例には手術を行います。

0歳 右内反足
受診時
Ponset法による
矯正
0歳 矯正終了時

3.下肢変形:脚長不等、内外反膝など

 脚長不等: 骨延長術または骨端線抑制術を行います。重症例では併用します。
 内外反膝: 変形の形態により創外固定による矯正または骨端線抑制術による矯正を行います

12歳 術後
1mm/日 延長
骨形成
抜釘
7歳 片側肥大症
脚長差34.1mm
右大腿骨遠位
骨端線抑制術後
術後3年
脚長差5.2mm

4.手の外科:先天奇形(多合指症、橈尺骨癒合症など)、肘・前腕など外傷など

5.脊椎疾患:脊柱側弯症、筋性斜頚、環軸関節回旋位固定など

6.骨系統疾患:軟骨無形成症、骨形成不全症など

7.麻痺性疾患:脳性麻痺など

 成長とともに症状が悪化し治療が必要となる疾患があるため、成長終了まで慎重な経過観察を行います。また、遺伝性がある疾患では、世代を超えて、子供や孫の代までフォローを行ないますので、非常に長い付き合いになります。小児整形外科医にとって、痛みや機能障害が生じないように治療を行なった患児が成長した姿を見守っていけることに非常にやりがいを感じます。

その他の「症例」や「専門的な知識」はintellgenceをご覧ください。