骨軟部腫瘍の領域│浜松医科大学 整形外科学講座(医師・医学生向け)

骨軟部腫瘍の領域

 骨軟部腫瘍外科は整形外科の一領域です。四肢、体幹部の支持組織(間葉系組織)に発生した骨、軟部腫瘍の良性腫瘍、悪性腫瘍のすべてを対象として診断、治療を行っています。発生頻度が低い上に組織型が非常に多く、病理診断が非常に難しいとされます。診断には病理診断、画像診断、臨床診断などを多方面から検討する必要性があります。初診から一期一会の思いを持って診療を行っています。

 治療は、手術治療、化学療法、放射線治療を組み合わせて治療を行っています。手術に関しては切除範囲の設定が再発を防ぐ上で重要となります。患肢温存を目指した広範切除を基本としています。ナビゲーションを使用した骨盤手術など、安全性、確実性を向上した手術も行っています。切除後は再建が必要となります。皮弁を用いた再建術を形成外科と合同で行っています。近年肉腫に対しての新規薬物が登場しました。当院には肉腫に適応のある薬物すべてが登録されています。適応を考慮したうえで積極的に化学療法を行っています。 

 紫藤 洋二

 がんは日本人の2人に1人が罹患し、死亡原因の1位の疾患です。近年薬物療法が発達し、転移後も長期生存する症例が増えています。がんの転移においては骨転移の頻度が高く、かつ骨転移に伴い患者さんのQOL (生活の質)の悪化は大きな問題となります。骨軟部腫瘍外科医の重要性が高まっています。がん骨転移に関しても主科と連携して積極的な介入を行っています。

上腕骨近位悪性腫瘍に対しての、関節包外切除、前鎖骨回転法を用いた生物的再建
骨盤悪性腫瘍に対しての広範切除、Hip transpositionによる再建
脛骨近位悪性腫瘍切除後 腫瘍型人工膝関節による再建

 骨軟部腫瘍外科は一例毎が異なります。絶えず学んで、悩んでいく必要性があります。検討事項も多く、一例毎が勉強になります。残念ながら根治には至らない症例もあります。患者さんに寄り添って共に治療を行っていくためには、患者さん一人ひとりとの意思疎通が重要となります。喜びもあれば、悲しみもあります。医師という職業を実感できる、やりがいある領域と思います。

その他の「症例」や「専門的な知識」はintellgenceをご覧ください。